入院中の自己破産申立について

入院している場合にも自己破産申立は可能です。

自己破産申立にあたっては弁護士との打ち合わせが必要ですので,外出許可を取って事務所までご来所いただくか,難しい場合には弁護士が入院先までお伺いすることになります(場合により出張費用がかかりますが,法テラスの援助を受けられる場合もあります。)。弁護士との面談の打ち合わせは,標準で1回(通常は2~3時間かかりますが,体調に合わせて調整は可能です),多い方でも3回程度です。面談で必要なことをお聞きした後は,メール,電話,手紙などで細かい点について連絡を取り合いながら手続きを進めていきます。

ご家族等がおられる場合には,資料集めなどはご家族にお願いすることもあります。頼れる方がおらず身動きが取れない場合は,ひとまず債権者に受任通知を発送してから病状の回復をお待ちします。債権者に受任通知を出すことで,金融機関からの取立を止める事が出来ますので,療養に専念できるようになります。

また,回復が見込めない状況の場合は,事情にもよりますが弁護士に依頼せずに放置するということも選択肢としてはあり得ます。債権者側は,請求書等を送付したり,裁判を起こしたりしますが,債務者がお亡くなりになった場合にはそれ以上の追及はできないからです。入院先まで取立てに来る金融機関はないでしょう。あるいは弁護士に破産までは依頼しないが,債権者との連絡窓口になることだけを依頼するという方法もあります。相続人がおられる場合には,迷惑をかけないように相続放棄をしていただくよう予めお願いしておくと安心です。相続放棄について弁護士がお手伝いすることも可能です。

回復が見込めない場合でも,弁護士に依頼するメリットのある場合もあり得ます。自宅へ請求書等が大量に届いてご家族が不安に感じている場合,ご自身の代で債務は清算しておきたいと考えている場合,債務があるけれども資産も少々ある場合(自己破産をしても一定の資産を残しておける場合があります)などです。弁護士に依頼すべきか否かお悩みの場合は当事務所へご相談ください。

 

 

 

 

 

 

尋問について

訴訟手続きでは,当事者や証人の方の尋問手続きが行われることがあります。

ご質問の多い事柄をまとめてみました。

■証言の位置づけ

当事者や証人の証言によって,裁判の結論が決定的に変わるということは例外的です。現在の日本の裁判では,書面,写真,録音,動画などの動かぬ証拠が重視されます。人の記憶に基づく表現である証言は,証言者の個性,能力,動機,立場などにより,同じ事実について語る場合であっても様々に変化する可能性があるためです。

従って,証言によって形成を逆転しなければならないとか,証言に失敗したら敗訴してしまうなどということは多くはありません。裁判所に提出してきた準備書面や証拠と整合性のある証言ができれば上出来です。そのためには,準備書面に事実と異なることを書かないこと,証言では体験したことを正直に話す姿勢が大切と考えます。

■打ち合わせをします。

依頼者の方と弁護士は証言前に打ち合わせをします(第三者の証人の場合は打ち合わせができない場合もあります)。

どのように打ち合わせをするかは,依頼者の方の個性により違ってきます。記憶力,表現力,経験値などの個性に応じて準備をします。打ち合わせ不足により弁護士の質問の意図とは異なる証言をするのは問題ですが,逆に準備をしすぎて台本を読んでいるかのような証言をしてしまうと「証言させられている」ような感じになり,信用性が低くなってしまいますので,弁護士としては注意と工夫が必要です。

■当日の持ち物,服装について。

服装に決まりはありませんが,華美ではない常識的な服装が望ましいでしょう。スーツなどが無難ですが,普段着の方も珍しくありません。普段背広を着ない方がわざわざ新調される必要まではないと考えます。

あまりに砕けた格好や極端な恰好をしていると(ビーチサンダル,ショートパンツ,サングラス,大量のピアスなど),証人に対する負のバイアスがかかりかねませんので,お勧めはできません。また,相手方が背広を着ているのに自分は普段着という場合,人によっては自信が持てなくなることもあり得ます。

持ち物は,印鑑(認め印),身分証明書(運転免許など),筆記用具,メガネ(読み書きに必要な方)をお持ちください。裁判所によっては,建物入口で金属探知機による持ち物検査があります。

■宣誓があります。

最初に証言予定者全員が証言台の前に隣り合わせに立って一緒に宣誓をするのが原則です。

相手方当事者と並んで声を合わせて宣誓書を読み上げることになりますので,これが不快な場合や,同席すると相手方から暴力等の危害を加えられるおそれがある場合などには,事前にご相談ください。

宣誓後は予め決められた順番に従い証言します。証言する方は証言台にある椅子に腰かけ,後の順番の方は傍聴席又は代理人席の隣に着席します。

■相手方に証言を聞かれます。

証言中は相手方も法廷内にいますので証言内容を聞かれます。反対にご自身も相手方の証言を聞くことになります。

証言中に相手方や傍聴人から姿を見られたくない場合には,遮蔽の措置(証言者と相手方又は傍聴人の間に衝立を設置。民事訴訟法203条の3)などが取られることがあります。

相手方の証言を聞くことが堪えられない場合は,法廷の外に出ておくとよいでしょう。但し,相手方の証言を知ることで,自身の弁護士に対し気づいた事柄を情報提供できる場合もありますので相手方の証言は聞いておくことをお勧めします。

相手方の証言中にヤジを飛ばすことは厳禁です。裁判官に悪い印象を持たれますし,悪質な場合には退廷を命じられます。

■書面を見ながら証言することはできません。

尋問では,メモや手帳などを見ながら証言することはできません。但し,提出されている証拠のある部分について質問される場合などに,該当する部分を尋問者から見せられることはありますので,メガネが必要な方は準備をしておきましょう。

■何度も説明してきたことを聞かれます。

尋問では,それまでに弁護士に対して何度も説明してきた事柄を改めて質問されます。何度も話した事柄なのになぜまたそれを聞くのか,と不審に感じるかもしれませんが,裁判官の面前で自分の言葉を使って証言することにより,主張の正しさを確かめているのです。

■叱責される場合もあります。

尋問では,相手方の弁護士から,意地悪な質問を受けることがあります。これは様々な角度から質問することによって証言の正しさを確認するためですので,感情的にならず,冷静に答えるべきです。感情的になって質問に答えないまま反論をしたり,間違った発言をしたりすることは有害ですので注意が必要です。

中には必要以上に証言者を叱責する弁護士もいますが,尋問に一生懸命になっていることの他に,依頼者の希望に沿うためのパフォーマンスの場合も考えられます。上記と同じく感情的になることには何の利点もありませんので,冷静に対処する必要があります。

反対に,自分の依頼した弁護士が相手方を強く叱責してくれないと不満を感じる場合もあるでしょう。しかし,尋問手続きは相手方を困惑させたり,反省させたりする場ではありません。依頼者に対するパフォーマンスのために証人を不快にさせることについて,裁判所は否定的です。叱責を受けて相手方が反省し,こちらに有利な証言を始めることは現実にはまず起こりません。

■質問が難しいときなど。

質問の意味や意図が分からないときは,無理に答える必要はありません。まずは,質問の意味が分からないことを正直に申し出ましょう。

言葉の意味が分からない,いつのことを聞かれているのか分からない,何かを見れば思い出すかもしれない,そもそも覚えていない,などすぐには証言できない場面は多いものです。なぜすぐに証言できないのかを説明しましょう。

■相手方当事者には念押しはしません。

相手側の証人が何か大事なことを言ったように思われた場合に,尋問するこちら側の弁護士が念押しの質問をしたために,「いえ,そういう意味ではありません」と,正反対の証言を引き出して藪蛇になってしまうことがあります。このため,尋問にあたっては,念押しや深追いは危険なものとされています。もともと証人尋問で決定的に裁判の結論が左右されることは少ないのですから,敢えて危険を冒して深追いするよりも,証人の信用性を揺るがせることで十分です。

従って,弁護士が大切に思われる場面で証人に念押しをしなかったことを心配する必要はありません。

 

弁護士から自己破産はできないと言われたとき

 弁護士あるいは司法書士に相談したところ,「あなたの場合は自己破産は無理です」あるいは「あなたの案件は引き受けられません」と言われてしまうことがあるかもしれません。実際に,当事務所の依頼者の方の中には,別の弁護士・司法書士からそのように言われて当事務所に相談に来られた方は少なくありません。
 弁護士・司法書士が,「自己破産はできない」とか「引き受けられない」と言う理由には,次のようにいくつかの類型がありますが,当事務所でお引き受けできる場合も多くありますので,まずはご相談下さい。

■ 著しい免責不許可事由がある場合
 軽微な免責不許可事由がある場合は珍しくありませんが,例えば,過去7年以内に自己破産をしたことがある,債務の大部分を遊興に使用しているというように,著しい免責不許可事由がある場合には,自己破産を申し立てたとしても免責の見通しがたちにくいことから,依頼を断られることがあります。
 しかし,免責不許可事由がある場合であっても,実際に免責不許可となることは極めて稀と言えます。準備を適切に行って申立をすれば,多くの案件では免責決定を得ることができます。

■ 借りたばかりなのに自己破産の相談をした場合
 例えば,数ヶ月~1年程度で数百万円を借り入れ,ほとんど弁済をせず,すぐに自己破産を希望するような場合です。このような場合は,破産法に定められた免責不許可事由に該当することはありませんが,弁済するつもりもないのに借りたのだろうと疑われても仕方がありません(*1)。もしそれが事実なら,詐欺罪(刑法246条)に該当する犯罪行為です。そうすると,そのような方から弁護士が破産申立の依頼を受けることには,倫理上の問題があります。
 また,このような場合,たとえ自己破産を申立てたとしても,そのような債務は非免責債権(253条1項2号)となる可能性が高いため,免責決定を受ける意味がないとも考えられます(*2)。
 以上のような理由で,私自身も,このような場合には,なるべく自己破産以外の方法をお勧めするようにしています。
 例えば,継続的な収入があるのであれば,債務整理特別調停をお勧めします。債務はほとんど減りませんが,当初の約定よりも低い弁済月額・約定利率で合意できる可能性があります。
 仮に,以上のような手続ができないほど収入が少ない場合には,消滅時効の完成を待つという方法もあります。時効更新事由(*3)が生じることなく,最後の弁済(*4)から消滅時効期間(*5)が経過すれば,債務は時効により消滅します。
 なお,このような借入について個人再生を申し立てたとしても,不当な目的での申立(民事再生法25条4号)として棄却されるおそれがありますので注意が必要です(札幌高決平成15年8月12日)。

*1 借りたばかりなのに返済できなくなったことについて,債務者には全く責任がない場合は除きます。例えば,借りた直後に,勤務先が倒産した,大怪我をした,重病を患ったなどという場合が考えられます。
*2 非免責債権か否かは,破産手続き上は吟味されず,債権者からの別訴で審理されます。債権者が金融機関や貸金業者などの場合は,免責決定さえ出されれば,非免責債権か否かに関わりなく,債権回収を打ち切るのが通常で,別訴を提起してまで回収を図ろうとすることは少ないでしょうから,免責決定を受ける意味が皆無とは言い切れません。
*3 時効更新事由とは,訴訟提起,差押え,弁済など,時効の進行を更新する事由のことで(民法147条~154条),民法改正前(改正民放は2020年4月1日から施行されています。)は「時効中断事由」との名称でした。
*4 債権調査手続のない同時廃止事件の場合の起算点です(民法152条参照)。
*5 債権の消滅時効時効は原則5年間です(民法166条。但し,民法改正により2020年4月1日より前の原因により生じた債権の消滅時効期間は原則10年間です)。なお個人再生手続きには,通常の民事再生手続きと異なって,確定判決と同じ効果はありませんので,民法169条(判決で確定した権利の消滅時効)の適用はありません。

■ 債権者にヤミ金融がある場合
 債権者にヤミ金融がある場合に受任できないというのは,法律事務所の防犯上の理由からと推測します。
 しかし,近年は,ヤミ金融と言っても,東京等の遠隔地を拠点とし(大阪から見た場合です),携帯電話だけを使用して取り立てをしている者が大半ですから,暴力行為等に及ぶことは稀と考えられます。
 当事務所では,原則として,ヤミ金融から借りているということだけを理由に依頼をお断りすることはありません。

■ 弁護士費用の支払いができない場合
 弁護士費用は弁護士ごとに異りますが,一般的には自己破産申立の場合30万円(税別)です。困難な事案の場合には,更に高額になることもあります。そして,弁護士費用は,一括払いを求められることも珍しくありません。費用の支払いができないために,弁護士に依頼できないという場合もあるでしょう。
 当事務所では,自己破産申立の弁護士費用は,他の一般的事務所と同じく標準的な事案で30万円(税別)ですが,分割払いをご希望の場合には,家計の状況を詳しくお聞きした上で,場合により3~5回程度の分割払いには対応させて頂いています。また,可能な限り法テラスをご利用いただいています(当事務所で法テラス申込みができますので,別途法テラス窓口へ出向いていただく必要はありません。法テラス利用の場合でも,自己破産申立の手続は私が行います)。法テラスを利用した場合,弁護士費用が低廉(借入先の件数により15万4000円~21万円です)となりますし,分割払い(毎月5000円程度の支払いで,無利息)が認められます。また,生活保護受給中の場合には,弁護士費用の支払いが免除されます。

■ 管財予納金の用意ができない場合
 個人の破産申立で管財事件となることは多くはありませんが,会社経営者の方などは,管財事件とされて,管財予納金の納付を求められることがあります。大阪地方裁判所の取扱いでは,最低20万5000円の管財予納金が必要です。この金額が用意できない場合には,裁判所に自己破産手続をすすめてもらうことができません。
 しかし,どうしても管財事件にしなければならない案件はさほど多くはありません。このあたりの判断基準は,弁護士により若干異なるところがあると思われますので,まずはご相談下さい。

 また,生活保護受給中の場合は,法テラスから管財費用の援助を受けられますので(返済は免除されます),心配はありません。

■ 弁護士の指導指示を実行できない場合

 弁護士に依頼した場合には,様々な書類の準備や費用の支払いが必要です。これらについて,弁護士から指定された通りの内容・期日で実行できない場合に,弁護士が辞任してしまう場合があります。とりわけ大人数で分業制により大量に受任している法律事務所では,依頼者の方が決められた通りに行動されないと業務に支障が出ますので,この傾向が強いようです。中には,その方の収入や生活状況に照らして到底不可能な指導指示を受けているような事例もあります。

 当事務所にはこのような理由で他の事務所から断られた方のご相談もお受けしております。それぞれの方の個別の事情をしっかりとお聞きすることにより,個別の事情に合わせた無理のない方法で書類や費用の準備をしていただいています。

 
 

自己破産申立が不安な方へ

 自己破産を検討中の時,これからの生活はどうなるのか,必要な資料集めがきちんとできるか,弁護士や裁判官から叱責されるのではないかなどの不安がつきものです。
 当事務所ではこれらの不安をひとつひとつお伺いした上で依頼者の方に安心していただけるように,心がけています。多くの方が不安に思われている事柄を書きます。

1 今後の生活について
  自己破産では,原則として不動産や自動車などの大きな資産を手放すことになる他は,生活状況が急に変化することはほとんどありません。
 自己破産を弁護士に依頼した後は,これまでしてきた弁済を停止することになります。弁済を止めても,金融業者が急に厳しい取り立てを始めることはありません。反対に,弁護士がご依頼を受けている間は,金融業者からの連絡は全て弁護士宛に来ますので,ご本人に対する金融業者からの連絡は一切なくなります。金融業者から仕返しや嫌がらせを受けることもありません(闇金融などについては嫌がらせが止まるまでに少し時間がかかる場合があります)。但し,保証人がいる場合には,保証人に対して請求が来るようになりますので,その方々についても法的解決法を検討しておくと安心です。
 自己破産のみを理由として解雇することは法律上許されません。自己破産を勤務先に知られることはまずありません。職業制限は一部ありますが,ほとんどの職業には関係ありません。
 持ち家は手放すことになりますが(手放す方法やタイミングについては,個別の事情によりますので,弁護士にご相談下さい。),賃貸住宅を退去させられることはありません(家賃を長期に渡り滞納している場合は別です。)。自己破産前後に転居することも自由です(但し,保証会社が必要な賃貸住宅を借りるときなどには,破産をしていたり,家賃の滞納歴があると,転居先探しに困難が見込まれます。)。
 また,携帯電話や電気・ガス・水道の契約をうち切られることもありませんし(料金を滞納しているときは別です),銀行口座を開設することも可能です(銀行から借入をしている場合は,若干の例外があります。)。
 しばらくの間は,自己破産の事実が信用情報に掲載されますので,新たな融資は受けられませんし,クレジットカードが使えなくなるなどの不便はありますが,良い方に考えると,収入の範囲で生活をする習慣を身に着ける機会とも言えるでしょう。一定の期間が経過すると,この不便な状態は解消されます(但し,申込時の就労状況や年収等により,融資の可否は左右されます。)。
 周囲の人々に自己破産をしたことが知られる可能性もほとんどありません。
 破産と同時に離婚される方もおられますが,それは破産が原因というよりも,夫婦間の信頼関係が不十分であった場合と考えられます。夫婦間の愛情が変わらないのに,破産と同時に離婚する法的なメリットはあまり想定できません(世間を気にして離婚される場合もあるようですが,そもそも破産した事実を他人に知られることは希です。)。破産者の配偶者の資産が差押えを受けることはありません。
2 資料集めについて
 本籍地が遠方にあるが戸籍謄本の取り寄せ方法が分からない,足が悪くて役所に書類を取りに行けない,預金通帳を紛失してしまった,退職金規程が必要なのに勤務先に言い出せない,家計収支表の書き方が分からない,読み書きが苦手で書類が書けないなど,様々な悩みをお聞きします。

 これらについても,個別に事情をお伺いして,資料集めでつまづくことがないようにお手伝いしています。依頼者の方々には,資料が用意できない場合には,悩まずにその都度電話でご相談頂くようにお願いしています。
3 弁護士,裁判官との対応について
 当事務所では,依頼者の方に安心してご相談いただけるように務めております。
 自己破産を検討しておられる方は,既に自責の念にかられたり,多額の負債を負ったことについて負い目を感じたりされています。しかし,弁護士がこれまでの行動を責めても何の解決にもなりません。むしろ,依頼者の方には十分に安心して頂いた上で,これまでの事柄を正しく説明して頂かなければ,破産手続を円滑に進めることはできません。依頼者の方が弁護士を怖がって,自分に不利な事柄を弁護士に言い出せなかったために,手続がうまく行かなかったという事例を見聞きすることがあります。そのため,当事務所の弁護士は依頼者の方を叱責するようなことはありません。
 また,自己破産手続では,裁判所にて審尋が実施される場合があります。このときには,手続の性質上,裁判官からの説諭があり,裁判官の個性によっては,叱責されているように聞こえる場合も確かにあります。緊張のあまり,うまく話ができないのではないか,と不安に感じることもあるかも知れませんが,この手続には必ず弁護士が立ち会い,必要に応じてサポート致しますので,心配はありません。当事務所では,うつ病を抱えておられる方など,精神的に不調な方々からも多くご依頼を受けておりますが,どんな方でも,審尋で失敗して免責が受けられなかったという事例はありません。

 

 以上の他にも,自己破産にあたっては様々な心配ごとがあるものです。弁護士に遠慮をして知り合いなどからアドバイスを受けておられる方も少なくありませんが,こういったアドバイスが間違っている場合は多いです。些細なことでも弁護士へ聞いてくださることが解決への早道です。
 

山口香JOC理事「今回の五輪は危険でアンフェア(不公平)なものになる」

オリンピックは,もはや平和のためにも,アスリートのためにも,国民のためにもなっていません。

山口香JOC理事の発言に賛同します。

 

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山口氏は,スポーツをお金持ちやトップアスリートだけのものにしてはいけない,スポーツを通じて培われた能力は社会に広く還元すべきとの持論をお持ちです。

 

 自他共栄
―― 生かし生かされる社会 ――

セクシュアル・ハラスメントで訴えられたとき

セクシュアル・ハラスメントの加害者とされた方の中で,相手を困らせてやろうなどという悪意を持っていたという人はあまりいないのではないでしょうか。

おそらく大部分は,「相手のことが好きだった」「親しくなりたかった」「喜んでもらえると思った」「自分に好意を持ってくれていた」という理由から性的言動を行ったのであり,その心情に嘘はないのだろうと思います。

加害者とされた方は,社会的地位が高く,仕事がよくでき,周囲からの信頼も厚く,まさか自分が性的被害で訴えられるとは思ってもみなかったことでしょう。異性や後輩から人気があると自負している場合もあるでしょう。

このため,加害者とされた場合には,なぜ自分が訴えられるのか,どこに非があったのかということが全く理解できないということがよく起こります。

そして,自身の正しさを周囲に理解してもらうために,自身の認識を語ったり,相手の側に落ち度があると説明したい衝動にかられます。実際にも真剣な恋愛をしていた,とか,相手が誘惑してきたので答えないわけにはいかなかったという思いを持っている方は多いです。また,高価なプレゼントを贈ったり,仕事で取り立ててやったのに,相手は恩知らずだという感情も沸いてくるのではないかと思います。

 周囲の方々も,加害者とされた方に対して理解,同情的な態度を示してくれる場合が多いです。それは,加害者とされた方が職場で重要な地位にあったり,仕事がよくできたりするためであり,しかも,ご自身の体験を理路整然と語ることができる能力があるためでもあって,当然ともいえる反応と考えられます。

更に,弁護士に相談した場合には,弁護士も,加害者とされた方の言い分を信用し,加害者と同じ認識に立って,弁護活動を展開してくれる場合もあり得ます。そうなると,裁判に至った場合には,加害の事実を否認することは当然であり,被害を訴えた方に対する批判を展開することになります。

しかし,今,現にこのような体験をされている方は注意が必要です。かつて裁判所は,このような加害者側の主張を正しいものとして受け入れることもあったようですが,近年はさほど単純ではありません。安易に事実を否認したり,被害者を批判したりすれば,「二次被害」を生じさせたとして賠償額の上積みをされることさえあり得ます。

被害者の側は,同じ過去の事実について,加害者の側とは全く異なる認識を持っています。そして,今日では,被害者側の認識がより客観的な真実に近いものであるということが,裁判所を含めて広く共有されるに至っています。

セクシュアル・ハラスメントで訴えられた時には,反射的に否定したり,反撃したりすることは正しくありません。被害者に直接会って真意を確かめようとしたり,説得しようとしたりすることも正しい対応ではありません(被害を訴えられた後に二人きりで会うと言う行為は,お互いにとって何も有益な点はありません。)。そうすることで,被害を拡大させ,更には自身に返ってくる不利益も一層大きくなるおそれがあります。

被害を訴える方は,誠実な謝罪を求めていることが多いものです。加害者を失脚させようとか,高額の賠償を搾り取ろうと考えている被害者ばかりではありません。反射的に否認したり反論したりすれば,被害を拡大させることになり,弁護士の介入や訴訟提起を招きかねません。

ご自身の行為がセクシュアル・ハラスメントに該当するのか否か判断ができない場合,被害者対応について不安のある場合は,ハラスメント事案について知見のある弁護士にご相談ください。

 

 

 

不当な就労指導について

生活保護を申請したばかりで、食べ物もお金もない状態でありながら、仕事を探すようにと指導を受けることは珍しくありません。

また、健康状態がよくないにも関わらず、就労指導を受けることもあります。

しかし、このような場合に、通常一般の就職活動をすることは非現実的です。お金がなければ面接に行く交通費もありませんし、不健康な体で就職しても仕事を継続できずかえって勤務先に迷惑をかけることになりかねません。

本来は、このような場合には現実的に可能な程度の就職活動をすればよいはずです。例えば、無料の求人情報誌などを利用して求人の情報を収集検討する程度しかできないこともあり得ます。

しかし、ケースワーカーはこのような個別の現実的なアドバイスはしてくれるとは限りません。こちらの方から就職活動がどれほど困難なのかを訴えて初めて現実に即した指導をするようになることは珍しくないのではないかと思われます。そして、生活保護の申請者や受給者は、生活保護費を受給する立場にあることから、このような常識的な訴えをすることさえ心理的にはなかなか困難です。少しでも反抗的態度を取れば生活保護費を受け取れなくなるのではないかと恐れているためです。

他方でケースワーカーの立場に立ってみると、意図的に嫌がらせをしているというよりは、底辺の生活を経験したことがないために想像力が働かなかったり、割り振られている仕事が多いために個別の細かな配慮ができなかったり,上司からの指示を機械的にこなしているに過ぎなかったり,というあたりに原因があるのではないかと思われます。

生活保護を申請したばかりで、お金もないのに就労指導をされている場合は、お金がなくても可能な就職活動は何かと質問をするとよいでしょう。

健康状態が悪いにもかかわらず就労指導を受けている場合には、病院受診を希望しましょう。生活保護申請中でも病院の受診は禁止されているわけではありません(ケースワーカーには病院を受診する旨を伝え,病院には「生活保護を申請中」であることを説明した上で受診します。)。そして,診察を担当した医師に就労が可能な健康状態かどうかを診てもらいしましょう。医師から就労は無理との判断が示された場合は、ケースワーカーに報告すれば、ケースワーカーから医師に対する意見照会を行った上で,健康状態が改善するまで就労指導は行われなくなります。

このほか、不当な就労指導をうけたときには、ケースワーカーに対して現実の状況を訴え改善を求めるのが良いでしょう。ケースワーカーに困難な状況をありのままに伝えることによって不利益な取り扱いを受けることはありません。あくまでも冷静に事実を伝えることが大切です。多くのケースワーカーは,困難な状況を理解し,ともに改善策を考えてくれるものと信じます。

ただ,残念ながらケースワーカーのなかには、正当な訴えに対しても杓子定規な指導を続けたり、病院を受診できることさえ教えてくれなかったりする方も散見されます。こうした場合には弁護士にご相談ください。