不当な就労指導について

生活保護を申請したばかりで、食べ物もお金もない状態でありながら、仕事を探すようにと指導を受けることは珍しくありません。

また、健康状態がよくないにも関わらず、就労指導を受けることもあります。

しかし、このような場合に、通常一般の就職活動をすることは非現実的です。お金がなければ面接に行く交通費もありませんし、不健康な体で就職しても仕事を継続できずかえって勤務先に迷惑をかけることになりかねません。

本来は、このような場合には現実的に可能な程度の就職活動をすればよいはずです。例えば、無料の求人情報誌などを利用して求人の情報を収集検討する程度しかできないこともあり得ます。

しかし、ケースワーカーはこのような個別の現実的なアドバイスはしてくれるとは限りません。こちらの方から就職活動がどれほど困難なのかを訴えて初めて現実に即した指導をするようになることは珍しくないのではないかと思われます。そして、生活保護の申請者や受給者は、生活保護費を受給する立場にあることから、このような常識的な訴えをすることさえ心理的にはなかなか困難です。少しでも反抗的態度を取れば生活保護費を受け取れなくなるのではないかと恐れているためです。

他方でケースワーカーの立場に立ってみると、意図的に嫌がらせをしているというよりは、底辺の生活を経験したことがないために想像力が働かなかったり、割り振られている仕事が多いために個別の細かな配慮ができなかったり,上司からの指示を機械的にこなしているに過ぎなかったり,というあたりに原因があるのではないかと思われます。

生活保護を申請したばかりで、お金もないのに就労指導をされている場合は、お金がなくても可能な就職活動は何かと質問をするとよいでしょう。

健康状態が悪いにもかかわらず就労指導を受けている場合には、病院受診を希望しましょう。生活保護申請中でも病院の受診は禁止されているわけではありません(ケースワーカーには病院を受診する旨を伝え,病院には「生活保護を申請中」であることを説明した上で受診します。)。そして,診察を担当した医師に就労が可能な健康状態かどうかを診てもらいしましょう。医師から就労は無理との判断が示された場合は、ケースワーカーに報告すれば、ケースワーカーから医師に対する意見照会を行った上で,健康状態が改善するまで就労指導は行われなくなります。

このほか、不当な就労指導をうけたときには、ケースワーカーに対して現実の状況を訴え改善を求めるのが良いでしょう。ケースワーカーに困難な状況をありのままに伝えることによって不利益な取り扱いを受けることはありません。あくまでも冷静に事実を伝えることが大切です。多くのケースワーカーは,困難な状況を理解し,ともに改善策を考えてくれるものと信じます。

ただ,残念ながらケースワーカーのなかには、正当な訴えに対しても杓子定規な指導を続けたり、病院を受診できることさえ教えてくれなかったりする方も散見されます。こうした場合には弁護士にご相談ください。